いやはや、なんともとんでもない時代に日本は突入してしまった。
共産党員として活発に活動していた作家・小林多喜二が、特高警察の罠にか
かって命を落としたのは、今から71年前のこと。そのころは、戦争反対を叫
ぶのも命懸けだった。治安維持法は、元々左翼過激派を取り締まるという口実
で設けられたはずだったのだが、それがいつの間にか共産党員がターゲットに
なり、穏健な社会主義者がターゲットになり、果ては保守層でも「戦争反対」
を叫んだり、当時の支配階級と敵対していた人間は、片端から牢獄にぶち込ま
れ、激しい拷問を受けたのだった。一般庶民は「隣組」という密告組織によっ
て相互監視され、うかつに反体制的なことは口にできない体制になっていた。
当然「戦争反対」を口にするのも御法度だった。
隣国に、その制度をそっくりそのまま受け継いだ国家が存在している。「拉
致国家」そして「核開発疑惑国家」と名指しで批判されている北朝鮮(朝鮮人
民民主主義共和国)である。あの国家体制のどこが「人民民主主義」なのかお
笑いだが、こちらの「天皇」を「偉大なる将軍様」と置き換えれば、かの国の
体制は戦前の日本ソックリであるが、そのことを指摘するマスコミがないとい
うのは、誠に奇妙なことである。
ついでに言わせてもらうならば、今のアメリカには「言論の自由」があるの
か、甚だ疑わしい。昨年のイラク戦争進行中、三大ネットワークとFOXテレ
ビ(ここはケーブルテレビ)は、ハンでも押したように「この戦争は綺麗な戦争
だ」という政府のプロパガンダを、これでもかとばかりに放映した。マスコミ
はこの戦争について、最後まで本当のことを国民に伝えなかった。心ある国民
の多くは、真相を、確度の高い情報を求めてインターネットを駆使した。イン
ターネットはゴミ箱の落書きだとほざく人間も多いが、この戦争は、インター
ネットに流れる情報の確度の高さが証明される出来事になった。ひと頃に比べ
て落ち着きを見せているとはいえ、活字メディアにおいても名門・NYタイム
ズで記事のでっち上げ事件が発覚するなど、マスコミの権威は失墜していると
いわざるを得ない。それほどアメリカマスコミの翼賛報道はひどかったわけだ
が、このことを伝える日本のマスコミは皆無だ。
しかし、いま我々が戦うのはマスコミだけではない。国家権力が、いよいよ
市民運動に対して牙をむけてきたからだ。
先月下旬、自衛隊官舎で反戦ビラをまいていた3人が、警察に「住居不法侵
入罪」で逮捕された。彼らが官舎でビラをまいたのは1回だけ、しかも逮捕さ
れたのは、実際に官舎でビラをまいてから1月以上も経ってからだという。そ
れじゃ伺うが、「いいビラ」「悪いビラ」を誰が判断するのだろうか?宅配ピ
ザ屋や寿司屋、各種広告をポスティングしている業者は逮捕されないのに、反
戦ビラをまいて逮捕されるのはどこか納得がいかない。聞くところによると、
今回の逮捕劇につながったのは、自衛隊の幹部が警察に対して「これから大事
な時期だというのに、隊員の士気を下げるようなことをされちゃ困る」という
クレームが入ったからだという。
捕まった3人は、元気に「完黙」を貫いているそうである。3人の所属団体
は抗議声明を出し、法学者のネットワークも「自衛隊員とその家族に対して
『共に考え、反対しよう』と呼びかけたものであり、その個人的法益を侵害す
るようなものではありません。自衛隊員とその家族は、市民としてこのような
情報を受けとり、その内容について自分で判断する権利があるのであり、『住
居侵入』という通常考えられない刑罰をもって両者のコミュニケーションを遮
断しようというのは、法の明確性、安定性、予見性を著しく害し、市民の間の
自由なコミュニケーションを萎縮させ、ひいては民主主義というコンセプトを
傷つける危険性を孕んでいます。
さらに、このような正当な表現行為に対して、当該行為を行った市民団体の
メンバーの逮捕、拘束にとどまらず、市民団体の構成員の自宅の捜索、関連す
るパソコンや書類の押収、という非常に強硬な手段が取られました。わたした
ちは、ここで対象とされているのは、ビラの投函という一個の行為ではなく、
当該市民団体の活動そのものであると考えざるをえません。今回の措置には、
自衛隊のイラク派兵に反対する市民団体を狙い撃ちにし、その正当な表現活動
を制限することに真の目的があると言わざるを得ません」と声明の中で触れる
など、今回の当局の姿勢に危機感を募らせている。さらに一昨日には、公務員
が公務中に特定政党(共産党)の機関紙をまいたという罪で逮捕された。生まれ
てこの方、こんなことは聞いたことがない。裏を返せば、市民意識に目覚めた
国民に対し、政府は何がなんでもその芽を摘みたいのだということなのだろう。
それだけ、彼らは国民に対して警戒感を抱いているということだ。だが、当局
が思っているほど国民は愚かではない。政治家も官僚も財界人も、これまでさ
んざん国民を愚弄してきた。その報いは、絶対に受けてもらうぜ!!